長濱国際特許事務所
 
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「発明の単一性の要件」が改訂され、二以上の発明について経済産業省令で定める技術的関係を有することが発明の単一性の要件となりました。 この改訂は、国際調和、特にPCT との調和を図るもので、国際的権利取得に係る手続負担の軽減及び円滑化が図られています。

(2004年4月23日 宮川斉士)


発明の単一性の要件の改訂について

[各論]

 

発明の単一性の要件について、特許法37条が改正され、具体的要件については、 特許法施行規則25条の8において規定されました。

 これは、従来法において、
・政令でなく法律で単一性の要件を規定していたため、技術動向等の変化に応じて単一性の要件を満たす発明の範囲を弾力的に改正することが困難であったこと
・「特定発明」との関係で発明の単一性の要件が判断されることによる種々の問題点があったこと
・条文上、発明の単一性の要件と先行技術との関係が不明確であったこと
・単一の請求項内で択一的な記載をした場合、単一性違反とならないという問題点があったこと
・PCT における単一性の規定ぶりと異なっているため、国際的に権利取得を目指す際の障壁となっていること
と言った問題点があったため、改正されたものです。

 各条文は、具体的には、以下のように規定されています。
○特許法第37条
 二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願することができる
○特許法施行規則第25条の8
第1項
 特許法第三十七条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。
第2項
 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。
第3項
 第一項に規定する技術的関係については、二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず、その有無を判断するものとする。

 また、新審査基準における発明の単一性の判断手法もPCT ガイドラインと調和したものとなっています。具体的には、
・発明の単一性の判断が、請求の範囲に最初に記載されている発明との関係で判断されること(審査基準「4、審査の進め方」参照)。
・「特別な技術的特徴」を有しているか否かで単一性の要件を判断すること
・「特別な技術的特徴」は、先行技術との関係において捉えられるものであること
・独立形式請求項と直列的な従属関係にある請求項については、通常発明の単一性の要件を問題とせず審査することとなっています。
 この改正により、特にPCTとの調和が図られ、国際的な権利取得に係る出願人の手続負担が軽減し、権利取得が円滑になったと言えます。


[ 事案検討 ]

[事例]
 以下のような出願があったと仮定します。

(発明の名称)除草性を有する化合物

(特許請求の範囲)
【請求項1】
 式:

の化合物。

【請求項2】
 式:

の化合物。

(発明の詳細な説明からの抜粋)
 本発明は、基本骨格を共通する2つの化合物に関するものである。両化合物は除草性を有することが確認されている。

      

            <以下において、点線で囲まれた基本骨格をR骨格という。>

 このような化学物質に関する発明の出願において、従来は、産業上の利用分野が同一及び課題が同一であるとして、又は、産業上の利用分野及び主要部同一であるとして、単一性の要件を満たしていました(旧37条1号、2号)。
 しかしながら、今回の改正により、本事例の場合には常に単一性の要件を満たすとは言えなくなりました。すなわち、本事例において単一性の要件を満たすためには、両化合物が「同一の又は対応する特別な技術的特徴」を有していることが必要となります。特に、
R骨格が新規な基本骨格ではない、すなわちR骨格が公知である場合には、以下の2〜4に示すようにそのケースに応じて単一性の要件を満たす場合と満たさない場合がありますので、注意が必要です。
(単一性の要件を満たす場合)

 1. R骨格が新規な基本骨格であると認められる場合

 →両化合物は共通の新規な基本骨格を有しており、更に両化合物は除草性を有するという点で共通の性質又は活性を有していますので「同一の又は対応する特別な技術的特徴」を有していると言え、単一性の要件を満たします。

 2. R骨格が公知である場合であっても、R骨格が除草性に寄与することは公知ではなく、R骨格にOH基又はNH2基を導入して化合物に除草性を付与するということに技術的な特徴があると認められる場合

 →化合物に除草性を付与することが「同一の又は対応する特別な技術的特徴」に該当するため、単一性の要件を満たします。

 3. R骨格が公知であり、更にR骨格が除草性に寄与することが公知である場合であっても、R骨格にOH基又はNH2基を導入して除草力が飛躍的に向上すると認められる場合

 →化合物の除草力を向上させることが「同一の又は対応する特別な技術的特徴」に該当するため、単一性の要件を満たします。
(単一性の要件を満たさない場合)

 4. R骨格が公知であり、更にR骨格が除草性に寄与することも公知である場合であって、R骨格にOH基を導入することで得られる効果が副作用の低減であり、一方R骨格にNH2基を導入することで得られる効果が除草力の向上にあると認められる場合

 →OH基又はNH2基を導入することに「同一の又は対応する特別な技術的特徴」があるとは言えないため、単一性の要件を満たさないこととなります。

[まとめ]
 今回の発明の単一性の要件の改訂により、単一性を満たすための要件は厳しくなり、従来は単一性が認められていたものであっても、改訂後においては単一性が認められない場合がありますので、注意が必要です。

〈参考文献〉
特許・実用新案審査基準
平成15年特許法等の一部改正 産業財産権法の解説 (発明協会)

以上


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